UNIX MAGAZINEのSkype特集記事
UNIX MAGAZINEの2004年10月号に、アリエルネットワークの岩田氏によるSkype特集「P2P IP電話Skype」(p.142-148)が掲載されました。Skype導入の手順から背景技術まで、Skypeに関する一通りの内容に触れている良い記事なので、Skypeの仕組みに興味を持っている方は是非読んでみてください。
僕自身の経験としては、Skypeについて断片的な知識しかもっていなかったために理解できなかった過去のニュースが、今回のこの記事のおかげで多少理解できるようになりました。例えば、SkypeやろうぜのIkejiさんがゼンストローム氏(SkypeのCEO)へインタビューした話(酔記/2004-07-17/SkypeのCEO-NiklasZennstrom氏(IKeJIWiki))にある
1時間以上話をさせていただいたので、内容を全部紹介する訳にはいかないが、印象的だった事を紹介する。それは、ネットワークトポロジの組み方についてだ。聞いた所によると、Skypeのネットーワークは、ユーザー数が無限大になっても正常に動作する訳ではないという話だ。
Skypeのネットワークは60億人程度のユーザー数には耐えられるが、それ以上のユーザー数には耐えられないという事を聞きました。確かに常識で考えて、世界の人口である60億人より多い人がSkypeで話す訳はないので、 Skypeではこれで十分だ。
という部分はSkypeの「Global Index」の仕組みが分かると、無限に拡張できないことは確かに納得できます。
ただし、このインタビューについては「これでホントに60億も収容できるの?」とか「そもそも60億って数字の根拠は?」とか、新たな疑問が沸いてくるかもしれませんけど(笑
米カスピアンネットワークス、P2Pトラフィックを制御する新ソフト「SW−P2PC−LIC」を発表(日経プレスリリース)
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=81737
P2P todayより。CacheLogicのP2P帯域制御装置との提携を発表するニュースが以前にありましたが*1、恐らくそれと関連するプレスリリースですね。
ただ、このニュースを読んだときにも疑問に思ったのですが、ApeiroとCacheLogicの間では一体どんな連携をするんでしょうか? Apeiroのトラフィック解析結果を元にファイアウォールやIDSを制御するなら分かるんですが、元々レイヤ7まで監視するP2P帯域制御装置と連携するメリットって何なのでしょう。Apeiroから見て怪しげなトラフィックだけ、P2P帯域制御の方へ渡すような処理なのかなぁ……。
話は変わって、このプレスリリースの中では以下の文面が気になりました。
これにより通信事業者は、より多くのユーザを既存ネットワーク上でサポートしながら、ネットワーク・コストの削減やトリプルプレイ・サービス(注2)などの新しいサービスを提供することが可能です。欧米で急速に普及しているインターネット電話「Skype」など、日々新しく登場するP2Pアプリケーションは今後も進化を続け、ネットワークのコストや通信事業者の利益に影響を与えます。通信事業者は、最小限のコストでP2Pトラフィックはもちろん、例えばSkypeもサポートし、それらを新たな収益源に変えることができます。
この文面の意図は、英語のプレスリリースの方を読んでもよくわからなかったのですが……恐らくこの背景にはSkypeと、ISPの提供するIP電話が対立する構図が想定されているのでしょう。
しかしこの両者を比較すると……「設備投資がほとんど必要なく、SkypeOutのようなプレミアムサービスで多少儲けられればビジネスが回るSkype」と、その一方で「他者と差別化されないために(モデム含む)設備投資をして無料のIP電話を提供しているが、IP電話では儲からないISP」という状況に見えます*2。もしもこの見方が正しいなら、SkypeとISPのIP電話は対立するような関係にはないわけで、結果としてこういう帯域制御装置でSkypeを制限したところでISPには何のメリットもない、とも言えることになります。それどころか、逆に帯域制御装置を購入しただけISPの損になってしまう、という気がするのですが……。
まぁ、上記の比較はあくまで僕の個人的な推測なので、実際のところはSkypeがISPの利益を食う構造になってるのかもしれませんけどね。
*1:参考:通信事業者向けのP2Pトラフィック検知・制御ソリューション(Enterprise Watch)
*2:少なくとも日本では。海外の事情はどうなっているのか、ちょっとわかりません……。
24dはどうもSNSのような気がしない / 24dとFOAF
僕は最初見たときから、24dが「ソーシャルネット」と謳っているのにはどうも違和感がありました。そもそも「SNS」という単語にははっきりした定義がないので、こんなのはタダの因縁にしか聞こえないと言われそうですけど、少なくともmixiやGREEとは違うということを感じた人は多いと思います。
じゃあ24dは一体何なのかと考えると……最初は「本棚.org」にも少し似てるかと考えたのですが……この24dに一番近いのはFOAF(Friend of a friend)のような気がします。つまり、24dは「FOAFの機能を普通の人にも取っつきやすくしたサービス」と言えるのではないかと*1。
FOAFについてご存じない方は、以下のサイトをご参考ください。
FOAF -- メタデータによる知人ネットワークの表現(The Web KANZAKI)
http://www.kanzaki.com/docs/sw/foaf.html
このように、FOAFとはRDF/XMLを用いて自分のプロフィール(他人との関係と、自分自身の属性)について記述するためのものです。FOAF自体はかなり以前からあるため、ネットをうろうろしているとFOAFを公開しているサイトに時たま出くわすことがあります。
で、それらをかき集めるクローラがあれば、一応24dのようなFOAFビューアは作れるとは思います。思いますが! それと24dは全くの別物になってしまうでしょう。その違いに開発者の思想が見えるのではないかと。
そのような想像上のFOAFビューアと24dを比較してみた結果が、以下のリストです。
- 24dは更新内容が即座に反映される。FOAFではRSSリーダのように情報をプルする間隔に依存。
- 集中型と分散型の違いです。
- FOAFはいくらでもプロパティを登録できる。24dは人とその他の属性を合わせて24個のみ。
- 自分のことを書こうと思えば思うほど他人にリンクを張れなくなるので、人と属性でそれぞれ別にリンク数制限があればいいのにとも思うのですが……その辺は設計者の趣味の範疇でしょうね。
- 24dはFOAFよりも人との繋がりを表現する幅が広い。
- 24dは人とのすれ違いが起こりにくい。
こう考えると、FOAFの「人と人とを繋げる機能」を強化したのが24dとも言えるのかも。ともかく、今後の進化に要注目です。
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その後、ちょっと「24d FOAF」でぐぐってみました。やっぱり同じようなことを考えている方はいるみたいです。
お手製SNS(無風地帯?)
http://d.hatena.ne.jp/calmzone/20040818#1092795617
これを見ていると、ちょっとだけFOAFを思い出します。僕はFOAFには手を出さなかったのでそれの中身はよくわかりませんが、あれはRDF/XMLを使って知人ネットワークを作っていたんですよね? 確か。そして24dにも、【他人との関係も含ませた自己紹介のページ】といった意味合いを感じます。もしβテストが終わって一般公開されれば、あちこちで見かけるFOAFアイコン*1のように、ブログのAboutページに自分の24dアカウントへのリンクを貼り付ける人が結構出てくるんじゃないかなあという予感。
koseki.cc | 日記 | 2004/08/18(水)
http://hpcgi2.nifty.com/paranoiautopian/diary.pl?t=20040818
上記はてなへの開発者の反応。はてなダイアリー(id:paranoiautopian)でもFOAF対応をToDoとして挙げてるようです。
24d風にfoaf群を横断閲覧できるサイトというのはどうか(おしまい日記)
http://d.hatena.ne.jp/hmmr03/20040911#p2
僕が「想像上のFOAFビューア」とお茶を濁していたところを、こちらの方は詳しく検討されています。
24d
http://www.ii.ist.i.kyoto-u.ac.jp/~koseki/24d/
koseki.ccの小関氏(はてな地図の開発者の方)が実験公開中の、「制限のある」ソーシャルネットワーキングサービスです。24dの詳細についてはヘルプページを参照。
・他のソーシャルネットワークとは何が違うのか?
- 人や属性(いわゆるコミュニティ)へ24個までしかリンク出来ません。また、それぞれのリンクについてのコメントも30文字しか書けません。友達を百人作れないし、好きな映画を羅列することも出来ないというわけです。
- 作成したデータは公開されます。アカウントを持たない人でも利用者のデータを全て見ることが出来ます。
- 相手の同意なくリンク出来ます。一方でメッセージング機能など、ネットワーク上で直接人と連絡を取る手段がありません。友達を作るには向いていないと思います
- 属性(いわゆるコミュニティ)に掲示板や意見共有の場が無い。議論や意見交換の場にも向いていないと思います。
それ自体で完結するようなサービスではなく、blogや掲示板など既存のサービスと補完しあえるようなツールを目指しています。blogやウェブサイトをお持ちの方は作成した自分のページへリンクすると、簡単な自己紹介に良いのではないかと思います。
どんなことになるかわかりませんが、とりあえず僕も登録してみました(吉澤のページ)。