旧・無印吉澤

昔はてなダイアリーに書いていた記事のアーカイブです

オーバーレイネットワークとIPネットワークの狭間で(亀井氏)

▼勉強会告知での紹介文

P2P技術は下位のIPネットワークを隠蔽できるという点で大きなメリットを持つが、IPインフラとの共存を図ることによって、さらなる発展を狙うという方向性も考えられないだろうか。本発表ではこのような問題意識からの課題整理を試みる。

▼関連サイト

▼講演内容補足

この講演については資料が非公開だったため、差し障りのない範囲で内容の一部を紹介します。(2004/09/12追記:現在はdigest版が公開されています。)

  • オーバーレイネットワーク
    • 固定ノード:ルータを置き換えるにはコストがかかる場合に、固定のノード間で仮想リンクを確立してルータの代わりにする。昔はこちらが流行りだった。(マルチキャストを実現するmbone、IPv6を実現する6bone、AkamaiによるCDNなど)
    • 動的ノード:最近のP2P技術はこちらに含まれる。自律性を持つエンドホスト・オーバーレイネットワーク。
  • 国内ネットワークの階層構造
    • アクセスプロバイダ
    • インターネットプロバイダ
    • 中継系のプロバイダ(大きなインターネットプロバイダはこれを兼ねる)
  • プロバイダ間の課金の仕組み
    • トランジット:従量課金
    • ピアリング:同規模のプロバイダ同士がIX等で相互接続。無料なことが多い。*1
  • ボトルネックの遷移と、それぞれの段階での対策
    • Web以前:ネットワークの広域化
    • Web以後:データセンタの発展
    • ブロードバンド以後:CDN技術の発展
    • P2P以後:規制?
  • 現在のトラフィックは恒常的なものなのかが不明。これは、今後のネットワーク設計をどうすべきかを左右する問題。
  • アプリ毎のトラフィック制御を行う製品
    • ソフト制御(軽い):法人ユーザ向け PacketShaper
    • ASIC(ハードで):ISP向け P-Cube,Ellacoya
    • プロトコル解析:One Point Wall
  • フロー制御:技術的に筋が良いが、利用者に説明するのは難しい。また、フローベースルータはまだ1社(Caspian Networks)しか提供していないので値段がこなれていない。
  • 国内インターネットはC/S (Web)に過剰適応している。
  • 帯域やトラフィックの課題についてはP2Pアプリケーション普及時に共倒れにならないよう、例えば下位レイヤとのやり取りだけでも標準化することが有効ではないか。

▼質疑応答

  • Q)フロー制御の製品名は?
  • A)Caspian NetworksのApeiro

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  • Q)今回の講演で取り上げた問題は、ネットワークが多重構造になってることが原因に見える。仮に、プロバイダがNTTとYahooだけになったら問題は解決する?
  • A)P2Pが最も弱いところを使い切るという構造自体は多重構造でなくなってもかわりない。したがって、表には見えないところでやはり同じ問題は発生する。

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  • Q)昔のISDNのように「(帯域制御の)設備が整ったときには時既に遅し」、という可能性も?
  • A)その可能性はある。
  • Q)今のP2P帯域問題はWinny等で動画配信(垂れ流し)していることが原因だが、P2P掲示板のようなテキスト配信が普及した場合もISPやIXには同じ問題が出てくる?
  • A)原理的には同じ問題が起こるはず。ただ、トラフィックの立ち上がり速度に対して、バックボーンの増設速度(同じ値段で張れる帯域の回線料)が追いつく程度ならば大丈夫。

*1:変わったケースでは、ソフトバンクはBBIXへの契約者に対してYahoo!BBとの無条件ピアリングサービスを提供しています。参考:BBIX株式会社 > サービス