旧・無印吉澤

昔はてなダイアリーに書いていた記事のアーカイブです

だからWinMXはやめられない

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音楽配信メモの津田さんが書かれたWinMX本。大分前に買ったのですが、今更取り出して読みました。

この本は、津田さんがインタビューしたとある男性の体験記です。「昔惚れていた人に似た女性と運命的な出会いをして付き合い始め、その看護婦の彼女とこっそり女子寮で同棲したのち、居たたまれなくなって寮を出て本格的な同棲を始める。その同棲開始直後に友人からWinMXというソフトを教えられ、次第にWinMXの魅力にとりつかれていく……」というのが冒頭の流れ。

このあたりまで読んで、僕はてっきり「WinMXにはまる→看護婦の彼女が愛想を尽かす→破局→残ったのはエロ動画だけ」みたいな展開になるのかと思って読み進めていったのですが……なんか、本編に彼女の話はほとんど出てきませんでした。で、「あの冒頭は何だったんだろう? ナースの方が気になって本編どころじゃなかったなぁ」とか思っていたら、終章には

IMでいろいろなファイルの交換交渉をしているうちに友情が芽生えた人もいるし、映画を見る本数も格段に増えた。普通、社会人になると新しい友達は作りにくくなるし、仕事が忙しくて学生時代の趣味を続けられないという人も多い。そんななか、多くの友人と新しい趣味を手に入れられたというのは、WinMXがあったからだろう。この1年半、WinMXにかかり切りで、彼女もそんな僕を見て呆れ気味だったけど、何だかんだいってうまくやってこれたのは、WinMXで落とした映画を一緒に見たり、彼女が聴きたい音楽を落としてきて一緒に聴いたり、そういう楽しい行為を一緒に「共有」できたからだとも思う。

なんて書いてある始末。なんだそのオチは! これだけWinMXにはまってるのにナースから見捨てられないなんて、こいつはそんなにいい男だっていうのかー?!

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なんだか敗北感が……。いや待て。ちょっと、落ち着こう。まじめに感想書きます。

この本では、その同棲男の体験記を通してWinMXの楽しさがとにかく徹底的に語られていて、読めばWinMXの「古き良き交換文化」がどういうものだったのかが大体分かります。これだけで十分価値がある本なのではないかと。ただ、それと同時に、上記の引用のようにはしゃいでる同棲男を見ていると「君のやってることが非合法じゃなければどれだけいいか……」となんだか(さっきとは違う意味で)憂鬱にもなる本です。

とはいえ、この記事が発行された当時(2003年7月21日)と今では多少状況が違います。

WinMXの「古き良き交換文化」は、「同じ趣味を持つ者同士のコミュニケーション」という側面と「同じ趣味を持つ者同士で連携したファイル収集」という側面を持っていました。しかし、現在ではこの2つの側面が、前者はblogやSNS、後者はWinnyShare(仮称)に分離しています(とはいえ、この両者は完全に分離しているわけではないのですけど→2004年4月20日の日記)。

現在では、前者の側面に惹かれていた人は、既にWinMXから離れてblogやSNSの世界に移ってしまっているのではないか、と僕は思います。しかし、こればっかりは実際に確かめようがないですね……。

参考:『だからWinMXはやめられない』発売3ヶ月後のあとがき(HotWired Japan)
http://hotwired.goo.ne.jp/bitliteracy/guest/031105/