RSSフィードはプレゼンスサービスになる？

RSSを利用して予定を知らせるカレンダーソフト「RSSCalendar」(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20070490,00.htm

ユーザーはRSSCalendarを使うことで、カレンダーの情報をRSSフィードに変換して、発信できる。友人、同僚、顧客などは、このカレンダーのフィードを登録しておけば、自動的に新しいアポの通知をユーザーから受け取ることができる。受け取ったフィードは、RSSリーダーに表示したり、ウェブベースのカレンダーやMicrosoft Outlookに取り込んで利用することもできる。

こういうソフトが登場するのを見ていると、僕には「プレゼンスサービスが埋められなかった需要を、今まさにRSSフィードが埋めているんじゃないか」と思えてきます。

プレゼンスサービスというのは、ICQやMSN Messengerのようなインスタントメッセンジャーで、ユーザの状態など（これをプレゼンス情報と呼ぶ）を交換するために使われている仕組みのことです*1。基本的なプレゼンスサービスはSUBSCRIBE（購読）とNOTIFY（通知）という2つの動作から成り、インスタントメッセンジャーを例に挙げると、その関係は以下のようになります。

「○○さんのプレゼンス情報（状態など）を知りたい」と予めプレゼンスサーバに登録しておくと(SUBSCRIBE)、
その人のプレゼンス情報が変化したときに、ユーザへ自動的に通知される(NOTIFY)

これは、

「○○さんのサイトが更新されたか知りたい」と予めRSSリーダに登録しておくと
そのサイトが更新されたときに、ユーザへ自動的に通知される

という使い方をされるRSSフィードとなんとなく似ているのが分かると思います。

このように、基本的な目的が似ている両者ながらも、RSSフィードは多方面への利用が注目される一方、プレゼンスサービスについては全く注目されていないのは何故なのか……？　それは、RSSフィードは、〈ユーザ情報を全く持たずに済む〉ように設計されているからです。

まず、RSSフィードでは大量のユーザ情報を保持する必要がある認証と認可の機能がバッサリ切り捨てられています。それと、インスタントメッセンジャーが行っているような情報のプッシュ配信もユーザ情報を必要としますが、RSSリーダはサーバに対して定期的にRSSを要求する（プル型）ので、サーバ側にユーザ情報は不要です。

その結果として、RSSフィードは単純なHTTPリクエストとそのレスポンスに置き換えることが可能――つまり、RSSフィードのための専用サーバを必要とせず、HTTPサーバで代用可能――であったために、RSSフィードがこれだけ普及したわけです。ここまでが現状のお話になります。

さて。

ここからが本題です。これは将来の話になるのですが、今後RSSフィードを利用したサービスが新たに登場していく過程で、この〈ユーザ情報を全く持たずに済む〉という特徴は維持されていくのでしょうか？

例えば、誰かが「認証機能が必要だ」と言い出した場合。RSSフィードのパーソナライズ機能を提供する国内のサービスとしては、現在ASAHIネットにて提供されている「MAILPIA」というウェブ更新通知サービス（RSSデータ生成）がありますが、将来このサービスがWebベースのRSSリーダと同様のアクセス制限*2を求めるようになると、ユーザを認証する機能が必要になります。また、今回取り上げたRSSCalendarにて「特定の知り合いにだけスケジュールを見せたい、または相手毎にスケジュールを見せる範囲を変えたい」という要望があった場合には、認証に加えて認可の機能も必要になります。

もしも、これらの需要が今後大きくなると、〈ユーザ情報を全く持たずに済む〉というRSSフィードの特徴は薄れて、プレゼンスサービスと同様の「ユーザ情報を管理するサーバが必要になる」けれど「認証する側と認可する側は分散した」モデルに近づくはずです。そのような事態が、今後RSSフィードの世界で起こるのでしょうか？

また、もしそうなった場合には、RSSフィードでもプレゼンスサービスのような機能を標準化する（車輪の再発明な）ことになるのか……またはプレゼンスサービスが復権するようなこともあり得るのでしょうか？　個人的には両者の棲み分けが進めばいいと思うのですけど、まだ先は分かりません。

参考記事：
沖電気、メールによるウェブ更新通知サービスをASAHIネットユーザーに提供(CNET Japan)
http://www.japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20069695,00.htm

Webマーケティング - RSS の企業利用、注目すべき3つの理由(Japan.internet.com)
http://japan.internet.com/wmnews/20040721/7.html