旧・無印吉澤

昔はてなダイアリーに書いていた記事のアーカイブです

ファイル交換ソフトによって起こるトラフィック問題は技術で解決出来ない?

昨日の予告通り、配給モデル(というかCDN?)の考え方を使った小話を1つ書いてみます。内容は「ファイル交換ソフトによって起こるトラフィック問題の解決方法」についてです。

さて、本題に入る前に、インターネット上で現在やり取りされているコンテンツの分類方法をひとつ導入します。インターネット上のノードが提供するコンテンツは必ず以下のどちらかに分類できる、というのが今回の話のポイントになるからです。

  • 特定のユーザに対するコンテンツ
  • 複数のユーザに共通なコンテンツ

前者にはメール、IM(インスタントメッセージング)、ボイスチャットビデオチャットのようなものが該当し、後者にはHTTP、FTP、ストリーミングなどが該当します。この両者の絶対的な違いは、後者の通信はマルチキャストCDN(昨日の配給モデルの話を含む)のような中継技術を使うことでネットワークに対する負荷を減らすことが出来ますが、前者の通信はサーバ-クライアント間、またはクライアント-クライアント間のP2P通信の場合に最もネットワークに対する負荷が少なくなる点です。

で、問題のファイル交換ソフト上でやり取りされるコンテンツはその中身だけを見れば後者に属します。なので、前述の分類通りに言うなら、このコンテンツによるトラフィック負荷はマルチキャストCDNで軽減できるはずなのですが、実際のところそううまくいきません。なぜなら、企業がこのようなファイル交換を援助するための機器を提供することは、たとえトラフィックの削減が目的であったとしても認められにくいからです。

参考記事:P2Pキャッシングはどうしてもダメ?(CNET Japan)
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000047715,20060045,00.htm

つまり、ファイル交換でやり取りされるコンテンツは「複数のユーザに共通なコンテンツ」でありながら「特定のユーザに対するコンテンツ」として扱わざるを得ないため、ネットワークに必要以上の負荷をかけていると言えます。ファイル交換ソフトの違法性によって発生する、ISPトラフィック問題の根本的な原因がこれです。この根本的な原因を取り除かなければ、ISPトラフィック問題は帯域制限などによって多少緩和出来たとしても、完全には解決できないでしょう。

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とはいえ、この根本的な原因を取り除く方法としては、ファイルシェアリングを前提とした上でコンテンツ配信(課金)が可能なビジネスモデルを考えるとか、コンテンツを使用する時点で課金してなおかつユーザの自由度を下げないビジネスモデルを考えるとか、抜本的で骨太なビジネスモデルを考えるとか、そういう夢のようなものしか思いつかないんですよねぇ……。うーん。