旧・無印吉澤

昔はてなダイアリーに書いていた記事のアーカイブです

SNSと匿名性

以前から、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)はユーザの発言時に実名公開を義務づける「実名主義」とセットで語られてきました。しかし、最近思うのですが、SNSを成り立たせるために実名主義は本当に必須なんでしょうか? SNSと匿名性は両立しないのでしょうか?

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P2Ptodayの横田さんからmixiに招待してもらう以前の、SNSのことを話で聞いていただけだった頃、僕は1つ重大な勘違いをしていたことがありました。それは、「SNSでは実名の公開範囲を制限できる」という勘違いで――世間で言われている「SNSには実名で参加」というのは、あくまで「運営者と友達には実名を見せなければいけない」という意味なのだと、長いこと考えてました。

しかし、実際には、既存のSNSでは実名を全く隠せません*1。既に何かSNSmixiやらGREEやら)に参加している方はご存じかと思いますが、普段ほかの人のページやコミュニティで書き込みをするときには仮名(ハンドルネーム)が表示されるものの、プロフィール画面では誰に対しても必ず実名が表示される仕組みになっています。

この辺りの実名主義についてSNSの運営者がどう考えているかは、少し前にITmediaに掲載されたGREE開発者のインタビューでも多少見て取れます。この話はちょっと極端すぎて、僕は読んでいて気持ち悪かったんですけど、あくまで一例としてご紹介。

「それでいい、楽しいから」――7万人の町「GREE」を一人で作ってる会社員(ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0407/30/news006.html

実名参加が基本のGREEだが、個人情報を公表するのが不安なら、名前も誕生日も職業も、非公開で参加可能だ。現実社会と同じさじ加減で、公開する情報を選べばいい*2

「でも、50年後、100年後には多分、名前を検索すれば、その人の年齢とか職業とかいうオープンな情報はすぐに分かってしまう時代が来る。友人誰もが知ってるような情報をあえて隠すことって、長い目で見れば、無意味だと思う」。

ここまでが現状のSNSのお話です。

しかし、上記のようなSNSの現状とは全くかけ離れた話になるのですが、僕はSNSでも実名をある程度隠せた方がいい(完全な隠蔽も含む)」と思います。これは、現在のインターネットは既に個人情報で溢れているからです。

50年後なんて待たなくても、現在でも誰かの本名をgoogleの検索フォームに入力すると、その人の周辺情報から年齢や職業、さらには過去の経歴まである程度知ることができます。この周辺情報というのは、学生時代の研究室のサイト、論文、仕事で書いた文書などなど、つまり他人の制御下にある情報で、本名はそれらの情報にアクセスするための一意なキーになっているわけです(漢字の綴りまで同姓同名の人が居る場合は除外)。

Web上で運営するサイトで実名を名乗らない人は、意識的または無意識にこうした脅威から自衛しているのだと思います。脅威といっても……特に実名がバレても死ぬほどの実害はないけど、気軽に個人情報を取られるのはなんとなく気持ち悪いから匿名で、という僕みたいな人も結構いるでしょうけど。

ここで、改めて現状のSNSを考えると、例えばmixiでは現住所、年齢、誕生日、出身地、職業について、「友人まで公開」「友人の友人まで公開」「全体に公開」の3つからアクセス制限を選択できるのですが、どうせなら実名の部分にもこのアクセス制限を付けるべきです。そうしないと、ユーザが公開したい個人情報の範囲を、ユーザ自身が十分に制御できないのですから。

*1:自分で確認した範囲ではorkutmixiGREEでは無理でした。他のSNSには、ひょっとしたら実名を隠せるものもあるかも……。

*2:言ってることはもっともなんですが、GREEでは名前も誕生日も入力必須なんですけどー。